GW特別企画・春道列樹とは?

最近、筋肉少女帯筋少の大車輪』をよく聴いています。

筋少の大車輪

筋少の大車輪

西川貴教のオールナイトニッポン』のコーナーと言えば、


あーつまれ社会の落ちこぼれ!!「踊る!ダメ人間日記」!!!


そのテーマソングこそが、このアルバムに収録されている『踊るダメ人間』だったのです。


中学3年生の頃、色々あってかなりネガティブ人間になっていた僕は、「踊る!ダメ人間日記」を聴いて、「もうこりゃダメ人間になるしかあんめー」と思ったりしたわけです。


なにしろ、自分にはイイトコロが全くないと思ったから。
まともに人と喋れないし、体弱いし、ナウい(死語の代表選手)モノをなにひとつ知らないし…。
そして、僕は、学校(中高一貫男子校=閉鎖病棟)内ヒエラルキーにおける最下層民として抑圧され続け、ついでに、卒業後も社会の落ちこぼれとして細々と生きていくしかないもんだ、という妄想を抱いていたわけです。
だーめだめだめだめ人間!!
てなわけで、『踊るダメ人間』は、わが暗い青春ソング(の1つ)なのですね。


まあ、なんと言っても僕は、自分に自信がありません。
それは今でもそうなんですが、しかし、それでも少しはオトナになったので、ダメな自分でもだいじょぶなのです。
ですけども、閉鎖病棟にいると世界が狭くなり、なんだか人間関係をある種の上下関係で見るようになり、自分は最下層民だ!世の中になんの足跡も残せない人間だ!とか思ってしまうのですよ。


社会に足跡を残せないという遠大な話と、日常的な人間関係の悩みという卑近な話を一緒くたに扱うところ、すばらしいバカさ加減。ま、中学生ですからね。どっちも、お先真っ暗という気分から出てきたものです。


ところが!!!
世の中には、実力も社会的立場もないのに、ただ運が良いだけで名前を残してしまう人がいるのであった!!!


僕にそのことを教えてくれたのは、春道列樹(はるみちのつらき)という歴史上の人物だったのです。
皆さん御存知の小倉百人一首。その32番目にこんな歌があります。


山川に 風のかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり


これを詠んだ人こそ、春道列樹です。


春道列樹について、島津忠夫・訳注『百人一首』(角川書店<角川文庫>/1969)にはこうあります。

春道列樹 生年未詳−延喜二十年(九二○)。主税頭(和歌色葉は雅楽頭)。新名の長男。延喜十年五月文書生、ついで大宰大典を経て、二十年正月、壱岐守となったが、赴任前に没した(古今集目録)。
(中略)
古今集』に三首と『後撰集』に二首の歌が見えるだけで、詳しいことは全くわからない。

なんというか、和歌の世界にも一発屋がいたんですね、って感じです。
下級貴族で無名の歌人が、誰でも知ってる百人一首に名を残したわけですから。


続いて、三木幸信、中川浩文・著『評解 新小倉百人一首』(京都書房/1995)より。

『拾穂抄』には、従五位下雅楽頭新名宿禰の長子、文書生、延喜二十年(九二○)壱岐守に任ぜられたというが、赴任せず没したと伝えられる。さほど名のある歌人でもなく、本集に選ばれたのも、撰者の好みであろう。

これはすごい!
列樹が一発屋(=1つとはいえ、すばらしい歌を残した)であることさえ否定し、「撰者の好み」で片付けてますよ。


とにかくにも、世の中とは不思議なものでして、素晴らしい事物が埋もれて無くなってしまうことがあると同時に、大したことない事物が生き残ってしまうことがあるのです。


だからさ、ダメ人間だって、運良く普通に生きられることがあるかもよ。


そんなことを思って、このブログにある僕のプロフィールには、
好きな和歌:春道列樹「山川に 風のかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり」
と書いてあります。


ちなみに、大学に入って、いま僕はとても幸せです。
だから、いま「ダーメダメダメダメ人間」になってしまっている中学生あたりに言ってあげたいんですよ。
「これでいいのだ」