オデュッセイア

書評シリーズその5。
なんとか西洋古典学専修課程に進学できそうな今日この頃、僕は『オデュッセイア』を読了しました。この作品は『イリアス』(『イーリアス』)と並ぶギリシア叙事詩の金字塔です。ちなみに、金字塔ってのはピラミッドのことだそうです。皆さん知ってました?


ホメロス・著/松平千秋・訳『オデュッセイア』(岩波書店岩波文庫>/1994)

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈下〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈下〉 (岩波文庫)


さっき金字塔って言いましたけど、『イリアス』が金将だとしたら、『オデュッセイア』は銀将という趣です。ギリシア叙事詩の最高傑作と見なされている『イリアス』ですが、僕はまだ読んでいません。『イリアス』から読み始めるのは負けのような気がして、先に『オデュッセイア』から読んでみたのでした。


知らない人のためにさらっとあらすじを。
トロイア戦争に出征したイタケの王・オデュッセイアが、戦争に勝って故郷に帰る途中で漂流してしまう。イタケでは、オデュッセイアの妃ペネロペイアのもとに多くの求婚者が集まり、乱暴狼藉を働く。漂流を終えて帰還したオデュッセイアと、その息子テレマコスは協力して、求婚者を誅殺する。
…ま、偉そうに説明してますが、僕も数ヶ月前までどんな話か知りませんでした。


さて、僕が気になった登場人物は求婚者の1人・アンピノモスです。
松平千秋氏の註によれば、「求婚者中、ほとんど唯一の善人である」とのこと。実際、求婚者によるテレマコス暗殺を2度に渡って止めたり、乞食に扮したオデュッセウスに施しをしたりしています。にもかかわらず、求婚者誅殺の場面では、テレマコスの投げた槍で胸を貫かれ、あっさり死亡。


まあ、アンピノモスも求婚者の一味であるし、暗殺を止められたのはその謀議に参加していたからではあるので、善人と言っても中途半端な善意しかない存在ではあります。
とはいえ、朱に交われば赤くなるという言葉もありますし、集団の中にいたらその程度の善意しか発揮できないのも仕方ないのではないかと。
所詮、集団の中では相対的な善意しか持てないであろう僕は、殺されてしまったアンピノモスの姿に同情を禁じ得ないのであります。


そういえば、中学高校の部活動で執行学年だったときには、現代のアンピノモスたちに妥協していたのだよね。でもまあ、あの時は大した役職に就いてなかったし、気楽な立場だったから。
実は、今のサークルでは、なんと代表者になってしまいそうなので、その時にはあからさまな悪人だけでなく、アンピノモスたちにも「青銅の穂先の槍」を投げなければいけないんですかね。うーむ。