チョイワルオヤジ

谷川雁が「原点が存在する」や「農村と詩」の中で「Y君」と呼びかけた相手=安西均(あんざい・ひとし、本名:やすにし・ひとし)って何者なのか気になって、『安西均詩集』(思潮社<現代詩文庫>/1969/asin:4783707162)を読んでみました。


なんだか「よろめきもの」とか「不良中年もの」とかいわれる作品が得意だったらしいです。「ひとづま抄」なんて詩もあるし。
そんな中、「good morning」という詩があって、道路のゼブラ・ゾーンが夜中に縞馬になって駆けていくという内容なのですが、そんな話なのに「不良中年もの」と同じようなテンションで語られるのが面白い。


まあでも僕は残念ながら中年ではないので、そういう詩はチョイワルオヤジな皆さんにでも任せておくとして、気に入ったのはどっちかっていうと、次に挙げるようなやつでした。

実朝 安西均


その目は煙らない
その目は寂しい沖にとどく
遙かなる実存の小島へ
その目は ずい! と接近する
それから島のまわりで
波が音もなくよろめいているのを
その目はズームレンズのように見る
その目は鹹い永劫が
しなやかにうねり
割れ
砕け
裂け
散ってしまうところまで細かく見る
その目はいつも涙に磨かれている
その目はなんでも見えすぎるために憂愁の光がともる
だから その目は雪の階段にひそむ暗殺者の
後ろ手に隠した白刃まで見ていなければならなかった。


「その目は ずい! と接近する」だなんて、なんともいいじゃありませんか。
久しぶりに鶴岡八幡宮に行ってみたくなったりします。