おおらかな地球人たち

「見たこともない美しさ」の宇宙人


今の日本にはおおらかさが足りないと思うんです。


たとえば、新書の世界。
一昔前は、岩波・中公・講談社現代に代表される、ちょっとお堅い教養新書と、光文社のカッパ・ブックス*1祥伝社のノン・ブック*2に代表される、ちょっと軽めの新書サイズシリーズが共存していたものですが…。
今じゃ、みんな教養新書の顔をしてお澄まししてるもんな。


たとえブックオフに行っても、二見書房のサラ・ブックスとか、徳間書店のトクマブックスとか、ほとんど無くなっちゃてるのが現状です。
なんでみんなして、教養新書でかっこつけなきゃイケナイのやら。


そこで、今日は一昔二昔前の新書サイズシリーズから、おおらかさに溢れた、古き良きUFO・宇宙人関連本を3冊ご紹介します。


ロビン・コリンズ・著、青木榮一・訳『謎の白鳥座61番星』(二見書房<サラ・ブックス>/1975)


さっき「ほとんど無くなっちゃてる」と書いたサラ・ブックスからの1冊です。
「人類の祖先は、太古の昔に地球へやって来た宇宙人移民だったのだ!」…みたいな、よくあるお話。
僕は本編よりも「訳者あとがき」が気に入りました。

いわゆる正統派の科学者の観点からみれば、ひどくお粗末な仮説という非難も出てくるだろう。訳者自身も、この問題ではまったくの門外漢であるが、常識からみてコリンズの説にうなずけない面も多々あることは否定できない。だが、この仮説の是非は別にして、秋の夜長を星空を眺めながら空想にふけるには、ちょうどよい読物である。


うーん、いいなあ「秋の夜長を星空を眺めながら空想にふける」ための読物。歴史とか宇宙とかに対するおおらかな姿勢が素晴らしいです。
昔は、世の中のオカルト一般に対する姿勢って、こんな感じだったと思うんですよ。
けれど、オウム事件のせいか、はたまたインターネットの普及のせいか、今はもっと息苦しい気がします。
「非常識はみんな粛正!」みたいな。


中村省三・著『宇宙人の死体写真集』(グリーンアロー出版社グリーンアローブックス>/1989/asin:4766331141


タイトルがひどい詐欺です。だって実際には「宇宙人の死体写真」なんて3、4枚しか載ってないんだもの。
あとの宇宙人の姿は全てイラストで掲載。しかも、目撃者本人が描いたらしいヘタクソなスケッチばっか。
あるイラスト(画像参照)のキャプションに「この絵からはなかなか想像できないが、これまでに見たこともない美しさだったという。」などと書いてあるのが、また失笑を誘います。
おおらかすぎる詐欺に、怒る気にもなれませんね。


この本には、さらに美点があります。
「邪悪な宇宙人・グレイが人間をアブダクションしていたりするが、ロズウェルでのUFO墜落以降、アメリカはエリア51で技術供与を受けるかわりにグレイの存在を隠していて…」みたいなUFO神話の確立とともに、世の宇宙人目撃報告というのはバリエーションがなくなってしまいました。
ところが、この本はUFO神話に組み込まれない有象無象の宇宙人目撃談を、これでもかこれでもかと紹介してくれるのです。
それがどれも、おおらかな話ばっかなんだなあ。円盤が飛び去った後に50センチくらいの宇宙生物が100以上もぞろぞろ湧いてきたとか。


「あとがき」の書き出しも気に入りました。

UFOが好きだ。好きという言葉が、いちばん適切という気がする。でも、ほんとうはUFOというよりも、ちょっと古いが空飛ぶ円盤とか宇宙機というほうがしっくりする。できるものなら、天気のいい日に低空を飛んでいる円盤を近くから見ていたい。


いい言葉だねえ…「UFOが好きだ。」
そう、ほんらいUFOって好きとか嫌いとかの問題だと思うんですよ。


S・ヴィジャヌエバメディナ・著、ミチコ・アベ・デ・ネリ・訳、韮澤潤一郎・監修『わたしは金星に行った!!』(たま出版<たまの新書>/1995)


わたしは金星に行った!!UFOは金星の都市に着陸した! (たまの新書)

わたしは金星に行った!!UFOは金星の都市に着陸した! (たまの新書)


同じたま出版から1986年に出た『惑星からの帰還』の新書化改題版です。
前掲2冊の版元である二見書房、グリーンアロー出版社(現・Bbmfマガジン)は、あくまで娯楽書ラインナップ中の1冊として、UFO・宇宙人本を出していたのに対し、たま出版は創業者に故・瓜谷侑広*3、現社長に韮澤潤一郎*4を擁するオカルト専門出版社。当然、タイトルからしてぶっ飛んでるこの本も、マジで出しちゃってます。
シリーズ名だって「タマ・ブックス」とかじゃなく、教養新書を意識したらしき「たまの新書」だもんなあ。


監修者のニラサワさんなんか、巻頭の「監修者解説」

だれもがNASAをはじめとする超大国の巨大シンク・タンクを相手に論争しようとは思わないかもしれないが、こと、宇宙に関しては、UFOの隠蔽工作に始まり、月面の人工的活動の黙殺など(『天文学とUFO』小社刊・参照)、情報操作が行われていることは明確だということを知らなければならない。


…なんて息巻いちゃってます。


けど、僕が重要だと思うのは、メキシコで出た原書の新版に載っていたというラファエル・ソラナ氏の書評「愉快で、愛すべき物語」なのです。

この本は娯楽としてお勧めする。興味を失なうことなく読み進めることができ、豊かなファンタジーと想像力をかきたてる世界が広がり、これからの文学に活かすこともできよう。


うーん、おおらかでいいなあ。
さっきの「知らなければならない」(!)なんてアジテーションより、よっぽどこの本の本質を捉えてると思います。


さて、3冊一気に見てきましたが、まとめるとやっぱり日本人はこうしたおおらかさを取り戻すべきだと思うのですよ。
というわけで皆さん、首相夫人がまた「わたしは金星に行った!!」的なことを言い出しても、おおらかに受け流してあげて下さいね。
…っていう結論でいいのか!?

*1:多湖輝『頭の体操』シリーズなど

*2:五島勉ノストラダムスの大予言』シリーズなど

*3:東京大学卒。浅野恭平「【船井幸雄の野望!】ジイさんの火遊び」(別冊宝島304『洗脳されたい!』宝島社/1997)によると、あの船井幸雄をオカルトの世界に引き込んだうちの1人らしい。

*4:法政大学卒。元・たま出版編集長。UFO研究家で、UFO=エイリアンクラフト説を支持。大槻義彦キョージュとの漫才(?)で有名。「『開星論』のUFO党」から参議院議員選挙への立候補経験もある。