90年代書籍特集

90年代書籍3冊


この前、といってももう随分前なのだけれど、MAXさんから“お前は現代を書いていない”などと指摘されまして、いやこれでも自分としては必死に現代と切り結んでいるつもりなのだけれど、才能の限界だとか趣味趣向の偏りだとかは隠せないものですね。


そんなわけで今日は、ゼロ年代の終焉直後というこの時期に、あえて90年代書籍特集。しかも、今から紹介する3冊は、僕が90年代のリアルタイムには間に合わず、後から追っかけて読んだ本ばかりで、つまりこの特集は二重に遅れているのである、と批評っぽいレトリックを用いて悦に入ってみたところで、はじまりはじまり〜。


高橋真奈実・著『デジタルペット大全集』(発行・パラダイム、発売・星雲社/1997/asin:4795241872


たまごっちの発売は96年11月。ブームが巻き起こると、類似品が雨後のタケノコのように現れました。そんなアヤシイ「デジタルペット」たちを80近くもフルカラーで紹介してくれるのがこの本です。発行が97年9月ですから、本家たまごっちの発売から1年経ってません。それまでにこれだけ類似品が氾濫するのだから、よくやるなあと思います。


とはいえ、そこらへんの国でテキトーに作らせたものも多いようで、紹介されているデジタルペットの中には「申子の寵物」、「かすいい恐竜」、「愛すべき」など、どう考えてもおかしな商品名が散見されます。最後のものには、さすがに著者も「なんというネーミング!」とツッコんでいますが。


この本は、たしか中2くらいの時(01年ごろ)にブックオフで見つけ、面白がって買った覚えがあります。もちろんすでに、たまごっちブームなんて過ぎ去っていました。その頃から僕は、“遅れてきた人”だったようです。


文化放送・編『大魔王の法則』(ソニー・マガジンズ/1994/asin:4789708985


03年7月から放送されているレコメン!も、もうスタートから7年近くになろうとしていまして、ゼロ年代を代表する文化放送の夜ワイド番組になりましたけれども、90年代を代表する文化放送夜ワイドといえば、93年4月から97年3月まで放送された斉藤一美のとんカツワイド』でしょう。


その『斉藤一美のとんカツワイド』のネタコーナー「大魔王の法則」をまとめたのが、この本です。表紙には、前頭部の2点だけを残して髪の毛を剃り上げ、ついでに眉毛も剃った「ムシケラカット」という無茶なヘアスタイルをした斉藤一美アナウンサーの顔が載っています。ちなみに、斉藤アナは06年2月まで、パスポートの写真がこれと似たり寄ったりの「オレバリカット」というヘアスタイルで写っているもので、入国審査の係員から「なぜ、この髪型を?」と尋ねられるたびに「イッツ・マイ・ジョブ!」と答えていたそうです。*1


放送当時の僕は小学校高学年にもなっていませんから、もちろん『とんカツワイド』を聞いたことはありません。野球の実況で斉藤アナを知り、その後に『とんカツワイド』やこの本のことを調べました。とはいえ、遅れてでも知ることができればまだマシです。この本に載っているネタの中に「アルシンド」やら「ラモス」やらという名前が出てきて、そういえばJリーグの開幕もこの頃(93年)であったと、当時の大ブームも含めて懐かしく思い出すのですが、しかしサッカーに関して僕は遅れっぱなしで、いまだに全く知らないのです。


三笠山出月・著『蔵出しうめぼしの謎 完全版』(大都社/2003/asin:4886534597


これだけゼロ年代の発行ですが、エニックス(当時)の漫画誌月刊少年ギャグ王に94年から96年まで連載された「うめぼしの謎」の復刻版ですので、実質は90年代書籍です。内容は、吉田戦車伝染るんです。』(89年〜94年)や、中川いさみクマのプー太郎』(90年〜94年)*2などに代表される不条理系の4コマで、このへんも90年代風味。


作者は当時高校生(〜大学生)で、その若さゆえか欄外に反抗的な落書きをしまくったり、写植が間に合わないほどに締め切りをぶっちぎって、全て手書き文字の原稿を載せたりしていたのですが、こういうアナーキーさが逆に当時の読者に人気だったんだそうです。しかし結局、連載は突然打ち切られました。打ち切り直前の数回は単行本にまとめられず、この『完全版』で初収録となっています。


さて、不条理系の作風にアナーキーな態度、加えて打ち切りという結末は、この作品にかなりアヴァンギャルドなイメージを与えるのですが、しかしよく考えてみれば、実は『伝染るんです。』や『クマのプー太郎』等ですでに確立していた不条理系4コマの流れを受けついだ作品であることを否定できないでしょう。ゼロ年代の“はじまり”を切り開いたというよりは、90年代の1つの“おわり”を飾ったものとして、『うめぼしの謎』を記憶したいと思います。


以上、本日は懐古厨乙!な特集をお送りいたしました。

*1:「一美のはだかのオレ様」2006年2月21日付「ヤンチャの余韻」(http://www.joqr.net/blog/kazumi/archives/2006/02/post_45.html)より

*2:余談ながら、TVアニメ版『クマのプー太郎』(CX、95年〜96年)は僕もリアルタイムで見ています。しあわせウサギが好きだった…。