近畿独立U5局制覇の旅その0(予習篇)

いやあ、やっぱ保谷はちと遠かったっす。同じ都内なのに。


さて、3月の初旬に近畿方面へ旅行する計画を立てていまして、まだ本社訪問を果たしていない独立U局残り5つを回りきり、ついでにCRKOBCWBSのAMラジオ単営局を3つ回り、どうせなので大阪準キー局5つも回っておき、また各所の地方紙を買い集め、地銀や第二地銀もできるだけ見に行き、さらに阪堺電車と京阪大津線に乗り、そればかりか阪神競馬場で「阪神スプリングジャンプ(J・GII)」をも観戦してしまおうというつもりなのでありますが、そのための予習というかなんというかで、この本を読みました。


井上理津子・著『さいごの色街 飛田』(筑摩書房/2011)


さいごの色街 飛田

さいごの色街 飛田


僕がこんどの旅行で利用するつもりの阪堺上町線の始点・天王寺駅の南西に、遊廓、そして赤線の名残りをとどめる街・飛田新地はあります。そこで営業している店は「料亭」と自称していて、客と店の女の子とが恋愛感情に陥って云々、ということになっています。
そんな飛田新地を12年にわたって取材したという著者は、取材の終盤、「料亭」の経営者たちからなる「飛田新地料理組合」の会館で、こんなものを見たそうです。

壁面に「感謝状」なるものがいくつも掲げられている。西成警察署長と西成交通安全協会会長が「一致団結組織をあげて交通安全のために尽された」、大阪府知事が「常に府税の納税に協力して本府財政の確立に寄与せられました」、大阪市消防局長と大阪市公衆集会所防火研究連合会長が「法令をよく守られ消防用設備の充実と火災予防を図り部会の強化発展につくされました」……。
飛田新地料理組合が、公的機関から「感謝」されてきたというのも妙だが、何より驚いたのは、マントルピースの上に飾られた写真である。料理組合の組合長と茶髪の弁護士が二人でにっこり笑顔で写っている一枚が、そこにあったのだ。
「あれ? これ橋下知事。『行列のできる法律相談所』に出ていたころの橋下知事ですよね?」
「そうや。組合の顧問弁護士。一回、講演に来てもろた時に写したやつやな」と幹部。
耳を疑った。
「えっ? ほんまに?」と訊き返しても、
「そうや。だいぶん前やから、ふたりとも若いわ」
と得意然としているのだった。
事務室の壁面に、組合長をはじめとする幹部の名札が並んでいる場所がある。その末尾に、「橋下事務所」と書いた札が確かにかかっているのも、見てしまった。


(228ページ〜229ページ)


「料亭」を経営していると称する組合、それを黙認する行政のほか、この本には色んな立場の人々が出てきます。「ドラマにでも映画にでもなる」ような、そしてところどころつじつまのあわない自己の来歴を語る昔の「料亭」経営者や今の「おねえさん」。菩提寺として料理組合から布施を受けておきながら、石碑をどこかへ動かしてなかったことにしてしまう寺院。飛田のことを聞くと、訊かれてもいないのに勝手に自分の「制度」に対する「意見」(「女性差別そのものじゃないですか」)を述べる著者の男友達…etc.

大人はみんな
ウソつきでずるい


雨がっぱ少女群『小指でかきまぜて』茜新社<TENMA COMICS LO>/2007/asin:487182957X所収、「雨がっぱ少女群」71ページより)


性、ないし生はたいていこんななので、文学という仕事がウソつきのウソを書いてくれることを、いつも僕は期待しています。もっとも、それをするときの著者は、一番ずるいウソつきにわが身を落とさなければならないのですが。
テレビもラジオも新聞も、みんなそろって大ウソつきです。銀行なんてしょせんは金貸しだし、路面電車はしばしば金食い虫だし、競馬はお馬さんの犠牲の上に成り立っています。でもだからこそ、いとしい。ウソつきは僕たちだから。あるいは、僕たちのことをウソつきだと暴いてくれるのは、ウソつきだから。


そういうわけで、僕はこんどウソつきに会いに行ってくるのです。