含羞のハガキ職人

2013中山新春JS馬券


きょう行われた障害競走の特別戦新年1発目「中山新春ジャンプステークス」は、同レースで一昨年、昨年と2年連続3着に入っていたハクサンが、今年は2着に5馬身差をつけて快勝しました。
以下、鞍上・石神騎手のコメント。

出遅れてしまいましたが、じわっと上がっていけ、勝負どころでの手応えも十分でした。早めのスパートはイメージどおり。中山のタフなコースが合いますよ。この馬でようやく勝ててうれしいです


(「競馬ラボ」http://pc.keibalab.jp/より)

いままで障害で31戦して勝利は1つだけ。しかし2着8回、3着6回、4着3回、5着2回とずっと健闘してきました。入障後の主戦は一貫して石神騎手だったにも関わらず、唯一の勝利(2010年11月21日東京障害未勝利)が五十嵐騎手に乗り替わってのものでしたから、「この馬でようやく勝ててうれしい」という感想もむべなるかな。
かく言う僕もきょうはハクサンと心中覚悟で馬単1着ながしを買って応援していたので、レースとしては3度目の正直、人馬のコンビとしては実に26度目の正直となる勝利に、ほとんど目を潤ませるほどでした。


去年馬券を当てたのも、シゲルジュウヤクが昇級後5着、4着、3着、3着、2着、4着と健闘し続けてきた末に挙げたオープン初勝利のとき(7月8日中京オープン)ですし、僕は微妙に足りないけど健気に走り続ける善戦マンというのが好きなのです。
これはアレです、ホームランバッターではなく、バント職人に自己投影してしまうのと同じ気持ちです。生来のスターではないけれど、地道にやっていれば自分もいつかヒーローになれる日がくるかもしれないという淡い期待。
実際には、報われるまでひたむきな努力を続けられるということ自体がすでに一種の才能なんだと気がつくわけですが、それでも陽の当たらない場所にいることを自覚する人(そしてそれはおそらく殆ど全ての人)にとって職人的なポジションというのはひょっとすると手が届くかもしれない夢であり続けるでしょう。


そんなわけで、栄光のスポットライトの中心に自ら躍り出ようとしないのが職人なのだと思いますが、するとハガキ職人というやつは実に因果な存在ですね。持て余しぎみの自意識をハガキにこめてラジオや雑誌に送りつつ、しかしどこまでいっても名誉欲に身を任せてしてしまうことはできない。だって、彼or彼女はあくまで「職人」なんですから。
ハガキ職人」という言葉が持っているはにかみの表情、憧憬と含羞の入り交じった色彩を、僕は好ましく思います。


長田悠幸、町田一八・構成協力『キッド アイ ラック!』1巻(スクウェア・エニックスヤングガンガンコミックスSUPER>/2012)は、お笑いなんて縁のなかった少年が、訳あって有名ハガキ職人のクラスメイトに弟子入りして大喜利の道を目指すという、どのジャンルに分類したらいいのかよく分からん漫画なんですが、このハガキ職人のクラスメイトというのが、周りにはそれを隠している地味なメガネっ娘でありまして、恥じらいっていいよね、と思わせるに十分なキャラクター造形なのです。
ちなみになんでこの女の子がハガキ職人だと主人公に知られてしまうかというと、放課後の教室で2人きりのときにカバンからラジオネーム入りのハガキが出てきちゃうからでして、「もし…ハガキ職人であることがみんなにバレたら…私…もう…恥ずかしくて学校に来られない…」(109ページ)とか言っちゃってるし、これ、クラスで言いふらしちゃうよって脅せばもっと恥ずかしいことを(以下自主規制)
いやだって、かわいい女の子も自分と同じハガキ職人をやってるっていうのは、これはこれでなかなかグッとくる妄想なわけですよ。三流どころか四流、五流投稿者やってた僕はそう思うんだけど…え、そうでもない?

キッド アイ ラック! (1) (ヤングガンガンコミックススーパー)

キッド アイ ラック! (1) (ヤングガンガンコミックススーパー)


さて、『キッド アイ ラック!』の掲載誌であるヤングガンガンには以前「ヴィン魂」という投稿コーナーがありまして、今は(こんな漫画やってるのに)終わってしまってもうないのですが、いつの間にかそこで採用されたネタをまとめた本が出版されていまして、僕も多少投稿していたもんですから、知らないうちに2、3がその本の中で取り上げられておりました。


ヴィン★セント秋山・編、金子ナンペイ・編・絵『偉人の条件』(アスペクト/2012)

偉人の条件

偉人の条件

とはいえ含羞こそがハガキ職人気質ですから、ぜひぜひ見てくれとは申しません。
お暇なときにふと気が向いたら、この本をほんのちょっとだけ開き、横目でただちらっと覗いて頂けるだけで望外の喜び、身に余る光栄でございます、はい。